手招き五十音

シンクロを愛で、すべてをことほぐ

【book5】扉を開ければ【おはなしの知恵】

河合隼雄先生の文章が好きだ
視点と語りに
へ〜、と思い
そうか、と感じ
こういう見方を自分もできるようになりたい、と「憧れ」を投影しながら読んでいる

河合隼雄『おはなしの知恵』(2000年・文庫2003年・新装版文庫2014年/朝日新聞社)

むかし話や神話に触れるのは楽しい
こんなお話があるのね、と知るだけでも面白いのに、さらに次の扉がある
その扉を開けるも開けないも自由、開けた後の景色をどう見るかも自由なのだが、なぜか共有できる世界が広がっている
集団的無意識、元型意識…呼び方や区別は曖昧でも、全貌などわからないにしても、誰もが一員として参加している

「七夕のおはなし」のなかに、小南一郎氏の所見を引きつつ“(機織りは)宇宙の秩序を織り出している”とあった
わたしは手織物に執着があり、売り場でつい気にしてしまう(自作はできない)のだが、単なる個人的好みだと思っていた「織り」が「宇宙の秩序」(!)へ通じるものとは想像の範囲外だった
だけれども、読んでみるとやはり「へ〜」

かつて『まんが日本昔ばなし』や絵本で見ていた「絵姿女房」
子ども時代、この話が好きだったことを読むまで忘れていた
“変身”から“再婚”へ進む河合先生の考察に「そうか」と付いていけるのは今の年齢からの祝福だろう
いったん忘れたおかげで新鮮に出会い直すことができた

点と点がつながる瞬間の明るさは何度でも体験したいもの
これは宿題とも違うが、いつか共に味わえたらと思う

「輪廻転生」と「太陽」がぶつかると、続々と人は死ぬし、太陽の光が一挙に消え去って「昏く」なる。「輪廻転生」と「月」の光が重なると、もちろん人は死ぬし、「悲しい」にしても、昏くはならないのではなかろうか。そこには「かげり」があるが闇はない。日本の物語は、むしろこちらの類なのではなかろうか。「あはれ」というのは、太陽からは出て来難い。それでは、アマテラスはどうかということになるが、アマテラスをわざわざ女神にしたことや、月読命ツクヨミノミコトという男性神の存在によって、味が変わってくるのだ。

参加している世界からの恩恵はきっと手を替え品を替えやってくる
長い時間を要してもいい
らせん状の円環
めぐる息吹と呼吸のさなか
こちらから扉を開け、信頼して迎えると決めればいい

Mistral [story] picture from Flickr, Thank you