ひとの日記が好きなので…
尾崎世界観『苦汁200%ストロング』(2021年文春文庫/単行本は2018年文藝春秋)2024.3.21読了
『苦汁100%』(2017)は昨夏、『母影』(2021)は先月読了
[dazzling] picture from Flickr, Thank you
尾崎世界観さんの“日々を記録しようとした記録”(2017年2月〜9月の日記)文庫版には書き下ろし「芥川賞候補ウッキウ記」(2020年12月〜2021年1月の日記)も収録
お顔は以前テレビ番組「セブンルール」で見たことがある
ロックバンド「クリープハイプ」のフロントマン
本名は祐介、1984年生まれ
一文字一文字を読み飛ばさせない日記
フォント・行の設定なんかもちょうどいいのかもしれない
ある日の文章
1秒が1秒として、時間がちゃんと時間として流れる、当たり前だけどなかなか無い、大切な時間だった。
この感覚、わたしは尾崎世界観さんの日記に感じる
文字数ぶん、読む時間を要する文章
当たり前のようで、実際体験するとこうして感想を書きたくなる
シャレとユーモア(サービス精神)に富んでいて、繰り返しクスっとニヤリとさせられる(引用は控えます)
過不足ない描写で
カーテン越し、風に吹かれる木に、どうしてもなんか惹かれるものがある。反対側、揺れる木の影と陽射しを、壁がぼんやり浮かべている。大切なものを見た気がして、記念に動画を撮った。録画ボタンのポン、という間抜けな音が恥ずかしい。
思考や感情も一緒に辿らせてくれる
写真を見ている時間は大切だ。意味がわからなくて理解できない、人が撮った写真なんて意味不明だ。それが心地良いんだよな。簡単に理解なんかしてたまるかよ。
世話になりっぱなしで頭が上がらない。でも頭が上がらないと、石田さんが覗きこむようにしないと会話が成立しなくなって、結果迷惑になるよな。よし、頭を上げよう。
素直、真っ当
まばゆいな
バランス感覚もしかり
(表現するために)表現しないことを取捨選択して、ピントを合わせて、目にできる明るさで差し出してくれている
至れり尽くせり
ファンと交流する有料会員サイト名「太客倶楽部」
本文中に(音源制作にまつわる表現として)“標本”ということばがあった
わたしはこれまで「ことば」にするのも刺し留めることの一つだと思っていて
話すことはまだしも、書くことは躊躇とウラオモテだった
無形の価値を損ったらどうしよう、と
尾崎世界観さんの日記は輪郭を浮かび上がらせる
掬い上げる、ピントを合わせる、「ことば」にするから共有される
わたしはなにか怖れていた
損う?
損なわれる?
そんなヤワな世界じゃないね
ここは汲めども尽きせぬ泉